大分市府内町のトキハ会館カトレアの間で行われた記念大会には楽習館くにみ俳句から6名が出席した。
最初に大分県現代俳句協会会長の河野輝暉先生が主催者代表挨拶。
河野先生は大分合同新聞読者文芸の俳句選者であり、じなしの所属するくにみ俳句の講師としてすでに15年となる。20年前に24名で設立した県協会も今や194名の会員数となったようだ。
大会の記念講演は現代俳句協会(第5代)会長の宇多喜代子さん。
演題は「現代俳句の魅力」。
俳句の歳時記は国語で教えるものではなく、地理、天文、植物、動物は理科で教えるもの。稲作を中心とした農耕や暮らしなかに自然観を知り感じたことを表す短文学であり、そして伝えていくものが俳句だという。
記念俳句大会(一人2句の事前投句)の結果が発表され、くにみ俳句からひさえさんが宇多会長の入選句にはいった。
洗濯の水音高く天高く ひさえ
「暮らしの中にふっと秋を発見した喜び、楽しさが伝わる句です」(宇多)
宇多会長の特選3句は
夏兆す水匂うまで刃物研ぐ 大分市 佐藤綾子
赤ちゃんの泣き声通る夏座敷 九重町 友田千里
入道雲持ち上げタンカー現るる 大分市 田口辰郎
同人選者による互選の結果
11点 現代俳句協会賞
八月に兄の還って来そうな樹 臼杵市 吉賀三徳
9点 大会賞
稲刈りし余熱の中に村ねむる 豊後大野市 梶原千代
8点句 大分合同新聞社賞
夏兆す水匂うまで刃物研ぐ 大分市 佐藤綾子
8点句 優秀賞
水田いま日昏れが厳父の中にある 竹田市 有村王志
7点句 優秀賞
人間は暗きにひそむ蝉の村 日田市 宮崎山景
5点句 秀逸賞
風鈴の風のかたちを音にする 国東市 立麻琴路
5点句 優秀賞
メルトダウン掴まるものがない蛙 豊後大野市 佐土原孤雁
5点句 優秀賞
ひまわりの向うは羽化の十八歳 豊後大野市 上田たかし
佳作賞(4点句)
ゆく年をすこしずらして釘を打つ 国東市 河野 泉
ほうたるに近付きすぎた男消ゆ 杵築市 友松照子
無造作に六月が来るパン屋くる 日田市 岩崎芳子
夫という不思議な人と蜆汁 豊後大野市 梶原千代
軍帽の遺影は老けず大暑かな 大分市 広瀬寒九郎
入道雲持上げタンカー現わるる 大分市 田口辰郎
この星の汚染清むまで滴りぬ 中津市 白水風子
安達太良山の空も濁りし智恵子の梅雨 中津市 神崎朱夏
蜉蝣にふれてだれもが老いぼれる 大分市 足立 攝
特別選者一句賞
成清正之選
好きなだけ骨辺になる山辛夷 国東市 河野 泉
土屋北彦選
人間は暗きにひそむ蝉の村 日田市 宮崎山景
河野輝暉選
ほととぎす過去帳出たり入ったり 宇佐市 南 喬穂
佐藤綾子選
梅漬けて平らな時間を共有す 福岡市 芦塚美穂
谷川彰啓
入道雲持上げタンカー現わるる 大分市 田口辰郎
宇多喜代子さんより80名ほどの出席者全員に「わたしの名句ノート」(発行所富士見書房・2200円)を頂きました。これは宇多さんが「俳句研究」(角川マガジンズが発行する俳句総合雑誌)に連載されていたものをまとめて出版されたものです。
じなしも3点をいただきました。
CTを抜けて浴びたる花明かり