豊後高田市黒土にある無動寺の背後に聳える岩山は黒土耶馬と呼ばれ、岩屋や無明橋など六郷満山寺院の修行場として面影を残している。
昨年10月には天念寺耶馬とともに
国指定名勝となった。ちょうど今年が1300年祭を迎える国東六郷満山にとってタイミングの良い指定だった。
日本の文化財保護法は、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地の中で、日本国にとって芸術上また観賞上価値の高いものを、文部科学大臣が「名勝」および「特別名勝」の名称で指定することができると定められている。15年ほど前に赤根温泉に山頭火句碑を建立した際に昭和4年の11月に山頭火が越えた山だと聞いていた。
山頭火は師匠の荻原井泉水にあてた手紙に・・・
「今日はしぐれる岩山を四つ越えました。両子寺、天念寺、椿堂、どれも岩山の景観を占めています。このあたりは小耶馬渓とでもいひたい山間であります」と書いている。
無動寺耶馬には無明橋があることを聞いていて、前からの宿題となっていた。
今回も国東の山歩きに詳しいH島さんにお願いして案内してもらった。
無動寺は六郷満山中山本寺(修行の中心的な寺)として栄え、最盛期には末寺が12あったという。本堂には本尊の不動明王像をはじめ、大日如来座像、薬師如来座像などの平安時代から鎌倉時代にかけての16体の木造の仏像が安置されており、すべてが大分県の有形文化財に指定されている。このうち、本尊の不動明王像は、檜の一木造で、像高115.8cm。12世紀中頃の作とされる。本堂の裏には、十六羅漢像をはじめとする石仏や石塔が並ぶ石仏公園がある。
身濯神社鳥居から山へ入る。8時38分。ここの標高≒80m。
石段を上がったところが身濯神社。
六郷満山寺院は通常六所神社として八幡大神(15代応神天皇)の母・神功皇后、比売大神などを祀るが、ここは伊弉諾尊大神ほか六祭神(後に二祭神を合祀)が無動寺を鎮守している。
荒れた竹林を抜ける。
削られた参道を通って不動岩屋へ・・ ややスリリング。
奥に祀られる石造不動明王。
削られた石段を進む。
無明橋が見えてきた。
長さ1m、幅50㎝ほどの石板を2枚並べて突き合わせている。中山仙境無明橋と構造は同じのようだ。
幅も広く、雑木があるのであまり高度感は感じない。
渡った先が展望の良い蝉ケ鼻。下から見ると蝉の頭のような形をしているようだ。
南に連なる天念寺耶馬と向き合う。こちらも国指定名勝となった。
よく見るとアーチ橋の無明橋が見える。
今日は朝から霧が出て視界は悪い。
耶馬大岩壁を見上げる。
さらに鎖場や岩場が続く。
山頂直下の岩屋に着く。ここは「龍の権現」といわれているようだ。
首のない石仏と欄干擬宝珠?を見る。
脇には染み出た(いのちの)水を貯めるところもある。
さらに岩場、鎖場を四足で登って行くとフラットな岩場の山頂へ上がり着く。
9時25分。
標高≒230mで寺の山号「威王山」がこの岩山の名と言われている。
霞んでいなければ絶景だろう。両子山方向。
縦走コースへ入って西向きの展望岩に上がる。
真玉の谷が周防灘に続く。
やや緊張する狭い岩場の登り。
この下の岩場を慎重にトラバース・・
狭い尾根道。
家の屋根が近づいてきて大分下って来た。
ここからは最近つくられたらしい標高差50mほどの鎖場コースを慎重に下りる。
下り着いたところから鎖場を見上げる。10時28分。
お大師様や稲荷を祀る祠もある。
椿堂遍照院へ無事の御礼参り・・・
ゆるりと7分ほど県道を歩いて無動寺駐車場へ戻る。
無動寺から歩いて来た耶馬を見上げる。
鎖場が連続する危険な修行場の岩山だった。鎖やロープの設置が十分ではないところもあり、単独縦走(登山)は控えた方が良さそうだ。
汗の半分は冷や汗だったかもしれない・・・
沿面距離≒1.9km
累積標高(+)≒250m
所要時間=2時間10分
(GPSマップ~拡大します)
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