国東半島先端部の国東市国見町では、今でも大熊毛内迫地区と野田堀池組の2か所で庚申祭が行なわれいる。
(最近までは岐部地区や櫛海地区でも行われていた)
堀池組では4年に一度の旧暦うるう年正月に庚申祭が行われると聞いて、ガイドや文化財調査委員など5人で見学に出かけた。
庚申信仰とは~
道教の教えでは、人間の体内には三つの霊が宿っているとされる。それは、魂(コン)、魄(ハク)、三尸(さんし)。人が死ぬと、魂(コン)は天に昇り、魄(ハク)は地下に入る。三尸(さんし)は、宿主が死んだ後は自由の身になることから、宿主が死ぬのを待ち望んでいる。
旧暦で60日に一回巡ってくる庚申(かのえさる)の日に、三尸は宿主の体内を抜け出して、天に昇って天帝に宿主の日頃の行状を報告する役目を負っている。三尸の報告によって天帝は宿主の寿命を決めるとされる。
これをさせないために、庚申の日には、前日から大勢が集まって寝ずにいれば、三尸は体内から出られない。平安時代に貴族の間で広まった信仰だが、江戸中期には全国的に庶民にも広がり庚申の夜は講組が集まって酒食を供し夜明けまで楽しんだ。
この行為を3年18回続けた記念に建立したのが庚申塔で、村を見下ろす高台などに建てられた。道教とは~
中国固有の宗教。儒・仏と並ぶ三教の一。不老長生をめざす神仙術と原始的な民間宗教が結合し、老荘思想と仏教を取り入れて形成されたもの。後漢末の五斗米道ごとべいどうに起源し、のち次第に宗教の形を整え、中国の民間習俗に強い影響力をもった。
今日は旧歴の元旦に当たる。
(旧暦の1年は平年約354日で、約3年に1回(19年に7回)の閏年は閏月が入って約384日になる)
今回の座元は郷司さん。8軒の講組で座元は4年おきに順に回ってくる。
郷司さん宅に朝早くから集まって餅を搗く。
お供えやかぶせ餅、お靴型などをつくる。
かぶせ餅は豊作を祈願するためのもので、お靴型をお供えするのは~庚申様は遠い国から歩いてやって来て信者の苦しみを救 ってくれる遊行神と信じられていたためのようだ。
うるう年なので12個の餅を詰めたパックを13個つくる。(十三餅というらしい)
お供えなどを準備して座元の家から庚申塔へ向かう。
10分ほど歩いて堀池庚申塔へ着く。
石殿寄棟で高さは2.57m。国東半島で一番大きな庚申塔だ。上部はだいぶ風化が進んでいる。
正面金剛が彫られた仏式庚申塔なのだが神式で祭典を行なってきている。
注連縄を張り、屋根宝珠の上に座元がもちを被せる。
お供えをする。
神主さんにより祝詞が奏上される。
玉串を奉奠して祭りを終える。
次に、近くの山中にある山神様向かう。
何も彫られていない自然石は山神様と伝えられているが・・ここでも餅を被せて同じように祭典をとり行う。
座元の家に戻ったら屋敷荒神祭が行われる。
床の間の掛け軸は「猿田彦」~神道の庚申様だ。
この後直会が行われ、地域のつながりが深まっていく。
庚申待(祭)の形態は少しずつ変わってきたようだが、これからもぜひ続けてほしい国東の貴重な信仰行事だ。
.